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2005年9月25日 (日)

眼科医と利き手について

眼科の手術というのは顕微鏡を使って椅子に座って行います。殆どの場合、患者さんの頭側に座って顕微鏡を覗きながら手術をするので、体の位置の自由度がありません。それで、手術を行いたい眼の場所によっては、右利きの術者でも左手でメスを使ったり、縫ったりしたほうが都合の良い場面があります。私も勤務の頃に手術をしていた時には利き手ではない左手でメスを使ったり、縫ったりしました。はじめはうまく動かせませんが、訓練で段々とできるようになります。中には左手が良く使えるようにと、左手で箸を持ったりして日常生活から訓練している同僚医師もいました(私はそこまでやりませんでしたが)。

さて、同僚の眼科医に左利きの人が何人かいました。左利きの人というのは総じて器用で、主なことは左手でするけれども、世の中右利き用に出来ている道具とかが多いので、子供の頃から右手を使う場面も多く、字を書くのは右手とか、左右ともによく手が動く人が多いです。で、こういう人は眼科の手術をするには非常に向いていて、多くの右利きの人が苦労して訓練してできるようになる事をたやすくこなせる場合が多いです。

ただ、この主な事は左手でするけれど、字を書くのだけは右手、という人は眼科医としては致命的に困った事になります。我々眼科医は、右利きの人間なら、診察時に患者さんの眼に触る時に必ず左手で触れます。決して右手は患者さんに触りません。右手は細隙灯顕微鏡を操作したり、眼底鏡を持ったりしますし、なによりもカルテを書くペンを持たねばなりません。先日書いた「はやりめ」の恐怖がありますので、患者さんに触れた手でペンを持ってはいけません。はやりめは潜伏期間があって、その間にも感染能力があると言われていますので、常に注意していなければいけないのです。

ある時、左利きの研修医が入局してきて、色々教えていくのに、左利きだから細隙灯顕微鏡や眼底鏡は左手で操作しますので、患者さんの眼に触れるのは右手なんですが、文字も右手で書くとの事。それでは「はやりめ」の患者さんを診察した時は困ってしまいます。それなら左手で眼に触れるようにしなさいと言っても、それはやはり利き手の左でないと細隙灯顕微鏡操作のような繊細な事はやりにくいようで、うまくいきません。結局、診察終わる度に、カルテを書く前に必ず手を洗って消毒するしかないという事になりましたが、これだと診察と患者さんへの説明との間に間延びした時間ができてしまいます。我々の手指の消毒というのはかなり念入りで、専用のポピドンヨードという、手術のときに使う消毒液でかなりしつこく指先から指の間を洗って、ペーバータオルで乾かしてからアルコールガーゼで拭きます。これは普通、診察・お話終了してカルテも書いて、患者さんが診察室を出られてから、次の患者さんを呼ぶまでの間にします。その時に細隙灯顕微鏡や椅子の消毒もします。それが済むまで、右利きの眼科医であれば、患者さんに触れた左手は一切どこにも触らずに宙に浮かしておきます。

このような不具合は、本来左利きであるのに、文字だけは右で書くように矯正された歪みから来る訳ですよね。文字は右で書くほうが書きやすいからと、右に直されるケースが多いようですが、別に左で書いたっていいんじゃないんでしょうか?左で文字を書いている左利きの友人も大勢いましたよ。歪んだ矯正は、こういう場面で不具合となって現れてしまいます。

世の中の左利きの方、恵まれた器用な手を持っているんですから、変な強制に負けずにがんばりましょう。左利きのお子さんをお持ちの親御さんたち、伸び伸びと使いたい方の手を使わせてあげてくださいね(^^♪。

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